土地購入編

 由緒正しいひよひよ家先祖伝来の土地かなんかがあればよかったのでしょうが、我が家にそんなものはありません。というか、たいていの北海道民は、代々続くお家や土地なんか持っていませんね。しがらみがないのは気楽ですが、家を建てたければ土地を買わなければなりません。というわけで、買うぞ、土地!

土地の条件

 北海道は土地が安いといっても、札幌市内はそんなことはありませんでした。そりゃ、東京に比べれば安いけれど、庶民にとってはフツーに高い。そして、当たり前ながら、いい場所は高いのでありました。家と同じです。高いには高い、安いには安い理由が必ずありました。

 で、我が家の欲しい土地の条件は?

夫ひよひよ「通勤に便利な駅近! 地下鉄徒歩15分以内がいい~!」「娘の学区は札幌市内にするんだ~!」

私(妻)「買い物に歩いて行きたい!」「小学校や公園が近いといいな♪」

夫&私「「地盤がよくて水害の心配もない場所!」

……。

 はい、この時点でどれだけ高いお値段ですか、と。そもそもそんな便利な場所、都合よく売り出されてますか、と。

 でも、土地も一生に一度のお買い物です。妥協は少なければ少ないほどいいです。とりあえずこの条件をはずさずに検討を始めてみることにしました。ま、探すだけならタダだし、急いでないことだし。

 

売ることを前提に買う!

 こんなに求める条件を高くしたのには、実はわけがあります。

 妻方の実家を見ていて、学んだことがあるからです。

 それは、

「不動産を買うときは、手放すときのことを見据えて買うべし!!」

 買う時点でもう売るときのことを想定してるんかい!? という突っ込みがきそうですが、侮っちゃいけません。

 不動産は、買うときは一瞬ですが、売ろうと思ったら買い手を見つけなければいけません。いくら自分たちが不要になっても、欲しいと手を挙げてくれる人が現れるまで、お金と手間をかけて管理し続けなければなりません。

 これが意外と大変です。夏は草取り、冬は雪の始末をしなければなりません。近所の人に迷惑をかけるわけにはいきませんから。建物があれば、壊れるたびに修理していかないと、ますます売れない物件になっていきます。建物がないならないで、固定資産税がバカ高いです。買い手探しのためには、広告費も出さなければなりません。

 この労力と費用をすべて、もう要らないもののためにかけなくてはならないんですよ。しかも、いつ買い手が現れるかわからない、先の見えない戦いです。

 百歩譲って、自分たち夫婦でやるならいいです。自分の蒔いた種ですから。

 でも、娘がやるとしたら? 現時点で一人娘、きょうだいができるとは限りません。札幌に住んでいるとも限りません。

 かわいいかわいい愛娘に、負の遺産を背負わせるわけにはいかないのです。

 では、どうする?

 そうだ! 誰もが欲しい土地を買えば、万事解決! 要は買い手が即座に見つかればいいわけでしょ♪

 そんな結論で、土地はあまり妥協しないことにしました。

 我が家の予算配分は、土地に若干大目にかけることになりそうです。

 

そうはいっても妥協点

 誰もが欲しいあの土地を、ぽーんと大枚はたいて買ってやるわ! とは、残念ながらできません。我が家のお財布は、そんなに潤沢ではありませんから……。庶民らしく、どこかはあきらめないとね。

 うーん、地盤をあきらめる? 防災マップを見ても、札幌の半分はグダグダ地盤だよね?

 いやいや待て待て。地盤が悪いということは、結局家を建てるときに深く杭打ちが必要になります。杭打ちも結構金額しますよね。節約したつもりが、杭打ちで費用をかけて、そのうえ地震のときには周辺液状化のリスクって……全然得した気がしません。

 地下鉄徒歩圏内に無理がある?

 でもなあ……夫がマイカー通勤不可である以上、終バスが早々に終わっちゃったとしたら、頻繁にタクシー? 定年まで、単純にあと30年近くあるけれど、これまたお得感がない話です。それに、バス利用の土地は山ほどあるから、当初目的のいわゆるすぐに手放しやすい土地から離れてしまいますよね。じゃあだめじゃん!

 と、いろいろ考えて、到達した結論がこれです。

 広さ、あきらめます!

 北海道の家といったら、広い敷地に家の他に車庫や物置を置いて庭や雪捨て場も確保して、というイメージがあり、実際私たち夫婦はそんな家で育ちましたが。(二人とも札幌よりかなり田舎で育ったので。)

 都会らしく、小さな土地にぎちぎちに建てましょう! 便利な場所でも、土地そのものが狭ければそのぶん安いはず!

 もともと私たちは庭仕事にまったく興味がないので、庭はいらないし、玄関からすぐ道路だったら雪かきも少なくてすみそうです。車庫は……車庫はやっぱり欲しいけれど、なんとかならないかな。

 おおっこれならいけそう♪

 

そんな土地は、ない!?

 さてさて、方針が決まったら市場価格の調査開始! まずはお手軽にネットで検索!

 ……。

 ……あれ、おかしいな?

 もっとひっかかってくるのかと思っていたら、全然、ですよ?

 しかも、駅徒歩圏ってキョリ測したら徒歩25分だったり。買い物便利って1キロ先に大きな橋向こうだったり。駅近くて買い物近くて安っ、と思ったら旗状地だったり。

 あとで某ハウスメーカーの営業さんに聞いてわかったことですが、今って一時期に比べて土地の流通の絶対量が少ないんですって。言われてみたら、地価が下落している不景気なこのご時世、持ち主さんは今売ったら損ですものね。

 これは気長に探すしかないのか?

 

餅は餅屋

 家を建てるのは急いでいないんだから、ハウスメーカーが決まったらそこで土地探しからお願いしようかねー、なんてのんびり言いながらモデルハウスをめぐっていた私たちでしたが、転機が訪れました。

 某ハウスメーカーの営業さんから、土地は水物だから、いろいろなハウスメーカーを利用して情報収集するくらいがいい、というお話を聞きました。なんでも、ハウスメーカーは市場に出回るより先に新しい情報を持っているから、ということらしいです。

 そうはいっても我が家はまだハウスメーカーは決めていないから、土地だけ探してもらってハイさようならってわけにはいかないです、と断ろうとしたんですが……。利用されるのもお仕事のひとつだから試しに見てみたらいい、と言ってくださったんですよね……。

 営業マンは契約とるのがお仕事ですから、そんなのは建前だとわかってはいました。が、そのメーカーはかなり気に入っていて選択肢に残っていましたし、ためしにちょっと聞いてみようか? と誘惑に負けちゃったんです。

 聞いてみたら、本当にびっくり!

 たしかに、ネットに出ていなかった物件が出てくる出てくる。

 しかも、かなりいい条件の場所がたくさん。

 本気で土地を探したいなら、専門家に頼むのがいちばん早くて良い情報を得られる! と痛感したのでした。

 ただ、むやみやたらにいろんなメーカーさんに情報をもらうのは、個人的にはやっぱりおすすめしません。

 結局我が家はその情報をくれたメーカーさんに後ろ髪をひかれながらも、別の工務店に決めてしまいました。我が家としては仲介手数料をその営業さんに支払いたいくらい感謝していたのですが、あくまでもハウスメーカーは家を建てるのが仕事だから土地の手数料はもらえない、ということです。だったらそこのハウスメーカーに頼めばよかったじゃないか、という話ですが、お買い物が「家」ですからね……。もっと小額な物だったらじゃんじゃん買ってお得意さんになりますが、家は一軒しか買えないし、一生に一度だから妥協はできません。これね、一般的な日本人なら、そのメーカーにお断りを伝えるのに心が痛んで痛んでしょうがないと思います。すっごく心無い仕打ちをしたような気分になります。だから、すっぱり割り切って考えられる人でないなら、断るときのイメージトレーニングをして大丈夫だと確信してから情報を聞いた方がいいです……。ちなみに我が家は、お断りの役目を夫婦で押し付け合い、最終的には夫が引き受けてやってくれたのでした。

 

土地購入は結婚と一緒だ!

 さて、その情報の中に、ひとめぼれ物件があったんですよね~。

 上にあげた条件をすべて満たしていて、ついでに妻方実家にもすごく近いというおまけつき。いい! すっごくいい!!

 高いけれど、あまり大きくなく区画を切ってくれているから、なんとかギリギリうちにも買えそうだったんです。

 現地をさっそく視察に行き、実際を見たらますますいい場所だなーと想いが募ってしまいました。

 ご近所さんに関しては賭けです。分譲地ですから、両隣ともこれから引っ越してくる誰かさんです。

 迷いました。

 こんなちょっと見ただけで買っていいものか? もっともっと、他の数ある物件と比較しなくていいのか?

 このとき夫が言いました。

「土地を買うのは結婚と一緒だ!」

 縁があってひとめぼれしたなら、つかまえないと後で後悔すると。その後出会った人がいくら素敵でも、前の彼女が忘れられなくて比較して、どうせここまで待ったならともっと条件のいい人を探し続けて、結局誰とも結ばれない……。そんなのはバカバカしいと。

「縁があったんだから決めよう!」

 だんな様、男です~♪♪

 なんということでしょう。難航すると思われていた土地探しが、奇跡の決断力であっという間に完了してしまいました。

 水晶宮殿計画、一気に具体的になってきました。

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